5月7日、米東部時間早朝、Sprint Nextel社はClearwire社とWiMAX事業の統合を発表した。SN社のWiMAX事業部をClearwire社に統合する一方、IntelやComcastなどから32億ドルのプライベート投資も集められた。事業継続会社はClearwire社で、株主承認、政府機関の審査が終わる来年春に、移行が完了する。
新規投資は、Comcast(CATV最大手)が10.5億ドル。Intelが10億ドル、Time Warner Cable(CATV2位)が5.5億ドル、Googleが5億ドル、Bright house(大手CATV)が1億ドルとなっている。
さてさて、これで破綻の縁にあった米国の広域WiMAX網建設プロジェクトは息を吹き返した。
しかし....
CATV3社は、AT&TやVerizon Communicationsとのトリプル・プレー/マルチ・プレー競争のために、モバイル網が必要だった。インテルはWiMAX搭載パソコンの普及に広域WiMAX網がどうしても欲しかった。Googleは次世代モバイル網ビジネスの多角化を狙っている。
Sprint Nextel社はこれでWiMAX投資の呪縛から逃れ、WiMAXベンチャーの夢をふくらませていたClearwire社は資金と電波免許を手に入れた。
これこそ「同床異夢」の集団。いまは八方丸く収まっているが、実際に事業を始めることになったら、各社の思惑がぶつかり合って動かなくなる可能性は極めて高い。LTEネットワーク建設を2010年以降に予定しているAT&T、Verizon Wireless社に先行するのは良いのだが、新生Clearwire社が、時限爆弾を抱えているように感じるのは僕だけだろうか?
小池良次(www.ryojikoike.com)
今週、ラスベガスで企業情報システム系の展示会、Interop2008が開催されたので、取材に行ってきました。今年はSoftware2008と言う会議と併設で、約2万人の来場者とか。(これで今年は既に3回?ラスベガスに出張です。ふ~)
Green ITとか色々面白いトピックがありましたが、僕的には...
今年の目玉はCloud Computing。
Amazon社のEC2やGoogle Appsなどが注目されました。Grid Computing、Cloud Computing、Utility Computing、SaaS、PaaS(Platform as a Service)、Widgetなどの流行語が乱れ飛ぶ感じで、混乱気味です。
用語を整理すると、SaaS/PaaSはアプリケーション層における分散コンピューティングの動き。そうした分散アプリケーションに適したデータ・センター機能を提供するのがCloud ComputingやUtility Computingと言う概念。もちろん、これらは仮想化技術がベースです。GridはCloudと同義にも使われているし、データセンターを超えた広域コンピューティング・システムという意味で使われていました。
いずれにせよ、必要な情報処理能力とストレージ容量を機動的(日にち単位で変更可能)運用する技術としてCloud Computingが持てはやされました。この点、昨年のInterop会議からの進歩。
面白いのはGoogle社。SaaS/PaaS大手のSalesForce.comと提携する一方、独自のGoogle App Engineを発表して、Cloud市場への参入を開始しています。将来的には、Google Appsをベースに一括で企業システムを提供するビジネスを狙っている。展示会場で、営業マンが一生懸命、企業への売り込みに力を入れていました。(←なかなか涙ぐましい)
通信業界ワッチャーである小生としては、こうした分散アプリケーションの動きに対応した“New WAN Service”の台頭に心ひかれました。これは、ウェブ・アプリケーションの高速化やSIPトラフィックを専用に取り扱うSIP Trunkサービス、帯域オンディマンドなどで、大手通信事業者が開発・販売に力を入れていました。
ちなみに、Ciscoの人は「米国のインターネット・トラフィックは、6割がビデオだ!」と騒いで、テレプレゼンス(ビデオ会議システム)の売り込みに力を入れてました。高度な回線サービスより、ビデオ会議を売った方が通信事業者にとっては売り上げがのびる!~と言うことなのでしょう。テレプレゼンス分野では、日本メーカーは出遅れ気味。
企業IT・ネットワーク業界は、また一歩、前進した気がします。
小池良次 (www.ryojikoike.com)
今日は、サンフランシスコで開催されたWeb2.0Expoに行ってきました。(原稿の締め切りに終われ最終日だけの参加となりました^^)
朝の講演はSun MicrosystemsのJonathan Schwartz CEO(写真左)とTim O'Reilly(同右)の対談。内容は、Schwartz氏のブログや同社がやっているクラウド・コンピューティング、ハイパワー・コンピューティング、ユーティリティー・コンピューティングなどの話。特に新しい発表もなく、聴衆へのメッセージもない「お手軽ばなし」に終始してました。
興味深いのは、初日に発表されたMicrosoft社のLive Mesh関連のセッションやプレゼンテーション。Meshと称していますが、通信分野のMesh Communicationとは関係ありません。内容はPCや各種ディバイスとのP2Pベースのファイル共有プログラムです。ベータ版ですから?今のところ各種ディバイスとして予定している携帯、STB、Gameコンソールにはのってません。
展示会場は、中小のネット系ビジネス・サイトのオンパレード。セッションを聴き、展示会場を歩いているうちに「この雰囲気は、なんか心当たりがあるな~」という気分。そう、数年前になくなってしまった“Internet Expo”の展示会場と同じ雰囲気、同じ内容なんです。
つまり、昔すごい人気を集めていたInternet Expoが、いまはWeb2.0Expoとなって復活したわけですね。
さて、来週はラスベガスでInterop(企業情報システム系の展示会)の取材です。
小池良次
CATVトップ(ComcastとTime Warner Cable、Cox)が携帯大手スプリント・ネクステルとの提携を解消する。
数年前、Comcast、TWC、Cox Communications、Advance NewhouseのCATV大手4社は、Sprint Nextel社と提携して、Pivotと言うジョイント・ベンチャーを設立した。狙いはトリプル・プレー(TV、固定電話、ネット)+携帯電話というマルチ・プレーを実現させるためだった。CATV各社はSprint Nextel社のネットワークを利用する代わりに、Sprint Nextel社はCATV番組案内などのスペシャル・アプリケーションを乗せた携帯端末を提供する予定だった。
しかし、Pivotプロジェクトはサービス開発が遅れ続けた。これはCATV側が望む携帯アプリケーションをSprint Nextel社が十分に提供できなかったためで、ついに「CATV側が我慢できなく」なって、提携解消となったようだ。
4メンバーのうち3社は解消を表明し、今のところAdvance Newhouseだけが立場を明らかにしていない。
ちなみに、Sprint Nextel社は現在、Clearwire社とWiMAXベンチャーの設立を計画しており、ComcastとTWCに出資の打診をしている。この件はPivotとは別の話だが、まったく影響がないとは言えないだろう。
最近は、顧客の純減、大幅赤字決算、Qwest CommunicationsがMVNO契約を見直すなど、Sprint Nextelへの逆風が続いている。
個人的には、2007年11月に辞任したゲリー・フォーシーCEOのひどい経営が現在の苦境を招いたと感じている。ビル・エズリー元CEOが苦労して育てたSprint社は、フォーシー時代にズタズタとなってしまった。
今年からSprint Nextel社のCEOになったヘス氏は、苦労がつづきそうだ。
小池良次
昨年末にVerizon Wireless社(米携帯業界2位)が、ネットワークのオープン化を宣言したことは、記憶に新しい。その余波が徐々に広がっている。
先頃終わった700MHz無線免許競売(アナログTV跡地利用)では、Verizon Wireless社とGoogle社が暗黙の連友関係で、AT&Tワイヤレスの免許応札額をつり上げ、同社に打撃をあたえた。次は、Verizon社が後押しするG-Phone(Google社のオープン携帯OSを乗せた端末)の発売を待つばかりだ。G-Phoneでは、GoogleよりもVerizonの方が熱心に宣伝しているのが興味深い。もちろん、G-Phoneでは自由にアプリケーションを開発して乗せることができる。Verizon/Google陣営では、開発したアプリは、自由にネットで販売できるフル・オープン戦略をとっている。
一方、AT&T/Apple陣営も対抗処置に奔走している。この春、AppleがiPhoneの開発キットを公開し、開発者は自作の携帯アプリをアップルストアーで販売できるようにした。それに応じてAT&T Wirelessも同じ戦略をとった。同社は、これまで端末メーカーなどのパートナーにしか公開していなかった技術ドキュメンテーションをネットで公開し、一般開発者が自由に携帯アプリを作れるようにする一方、AT&Tのウェブで販売する事も発表している。ドキュメント公開理由をオープン化に結びつけず、「ユニバーサル・デザイン促進のため」としているところが、AT&Tらしい。
両陣営とも、開発情報(ドキュメンテーションや開発キット)はオープン化し、販売網だけをATT/Apple陣営は自社サイトに限定する一方、Verizon/Google陣営は自由販売としている。こうして米国の携帯オープン化は、VG陣営 対 AA陣営の対決という構図を鮮明にしている。
また、ウィンドウズモバイルを抱えるマイクロソフトはどうするのだろうか? その点も気になる。同社はSprint Nextel社よりもT-Mobile USAに近寄っている気もするが。
この余波が、日本の携帯業界に飛び火するかどうかは予断できない。遅くとも、クリスマス商戦で両陣営がオープンアプリケーション戦争を展開し、良い結果がでれば、日本の携帯各社もオープン化を追うだろう。
いずれにせよ、面白い事になってきた。
小池良次@展示会取材で出張続き&久しぶりのブログ
昨日、ようやく終わった700MHz競売(アナログTV跡地事業免許)の結果がでた。
注目のGoogleは、Verizon Communicationsに完敗し、念願の700MHz C Blockでひとつの免許も買えなかった。
これでGoogleが独自に携帯電話網を建設するプロジェクトは、夢に終わった。
まあ、数兆円はかかるプロジェクトだけに、負けたGoogleもホッとしているだろう。Googleの株主は一番幸せなはずだ。
そして米国の携帯電話会社も、Google参入の脅威が当面 “遠のいた” ことに胸をなでおろしている。
ぼくも...「Googleが携帯電話事業に参入するのは、同社を危機に落としかねない」と周囲に述べていただけに、ホッとしています。
小池良次(www.ryojikoike.com)
サンノゼでVON会議が開催されたので、取材がてら、顔を出してきました。
インターネット電話ブームに乗って成長してきたVON会議は、いまや中小企業向け電話システムの総合ショーです。
Asterisk Worldが併設され、アスタリスク(オープンソースPBX)関連のセッションや展示が目白押しでした。着々と拡張が進んでいるアスタリスクは勢いがあります。アスタリスク会議の参加者は、同製品のユーザーが多く、質疑応答になると具体的な問題を取り上げての議論になって、迫力があります。どんどん実力をつけているのを肌で感じます。
基調講演では、インテルのAnand Chandrasekher(Sr.VP & GM, Ultora Mobility Gourp)氏が、インターネットモバイル端末の最新情報を紹介していたほか、スプリント・ネクステル社とAT&T社のネットワーク・アーキテクチャーに関する情報もありました。
こんな電話会社のネットワーク話は「VONの参加者にとっておもしろいのかな?」と首をかしげましたが、僕的には非常に興味深かったです。専門的な話で恐縮ですが、日本のNGNと米国のNGNはIMS/SDPの取り扱いで微妙に違いがあるのです。スプリントとAT&Tは具体的なブロック図を示してくれたので、「な~るほど、こう違うのか」とウキウキしました。
元FCC委員長のReed Hunds氏も登場し「中国脅威論」をテーマに話をしていました。中国に負けないように「米国も努力しなければならない」「インフラ投資をもっと充実させないといけない」と警告しています。確かに、ブッシュ政権は通信インフラを筆頭に産業基盤育成に力を入れてきませんでしたから、(選挙戦もあって)その辺をついている感じです。
明日はフェムトセルの話もあるので、また取材に行こうと思います。
追伸:今日、ようやく700MHzオークションが終わりました。落札者の具体的な名前などがFCCから発表されるのは数日後でしょう。楽しみです。
小池良次(www.ryojikoike.com)
最近は国際通信市場の動きが激しい。
ちょっと古いが、3月5日、AT&Tは、海外ネットワークの拡充を狙って、10億ドル(1000億円強)の投資を発表した。昨年は7億5000万ドルだから、約3割の増加ということになる。投資先はアジア向け海底ケーブル、アジアおよび欧州のイーサネットワーク拡充が主となる。
アジア、欧州網の拡充は、AT&Tだけでなくベライゾン・コミュニケーションズ(米第2位の電話会社)も力を入れている。もちろん、これらの国際幹線網はIPv6対応。また、グーグルも独自にコンソーシアムを組んでアジア向け海底ケーブルの敷設プロジェクトを始めている。
このようにアジア向け海底ケーブルは新規敷設による拡張が続いているが、中国、インドなどの需要が拡大しているため。正確な数字はわからないが、北京オリンピックの影響で中国本土向けも逼迫しているらしい。
数年前まで、どうやって海底ケーブルのトラフィックを埋めよう悩んでいたのは嘘のようだ。1990年代の国際通信ブームを思い起こさせる。日本では、行政もメディアもこの分野には無関心。まあ、日本の事業者も着々と中国などにデータセンターを建設しているが、国際幹線回廊を整備すると言った大きなビジョンにはなっていない。欧米ではプライベート・イクイティー・ファンドがこの分野に顔をだしている。とすれば、日本も商社さんが、この分野に手を出しているのだろうか(←小生は不勉強で知らないが)
小池良次(www.ryojikoike.com)
1月から始まったアナログTV跡地(700MHz)競売もそろそろ最終段階に入っているが、最近WiMAX陣営のニュースが増えている。
先日、NextWave Wireless Inc.がWiMAX用テレビ放送技術“MXtv”を発表した。同社は、着々とWiMAX関連機器の開発を進めるかたわら、ラスベガスでWiMAX網を運営している。同技術は、700MHzを使って地方の通信事業者が小規模のWiMAX放送事業を展開するために用意されたようだ。今後の動向が興味深い。
なお、NextWave社はHuawei Technlogies社とのジョイントベンチャーも同時に発表した。Hunweiの4G基地局およびASN-GWに関する提携だそうだ。
ちょっと古いが、WiMAXフォーラムは700MHz製品に関するロードマップを発表(2月中旬)した。現在、米国では2.3GHzおよび2.5GHz帯の製品開発が進み、機器の認証テストなども動いている。これはSprint Nextel社のWiMAX網建設が同帯域で行われるためだが、その次には700MHz帯向けWiMAX機器開発へと動くようだ。(なお、3.5GHz関連開発は既に動いている)
ちなみに、アナログTV跡地の再活用を狙った700MHz無線免許競売は、1000件を超す細かい免許を発行する。その大部分は、携帯電話(3.9G~4G向け)に利用される。WiMAX関連利用は700MHz免許の一部にすぎず、それほど大きな市場ではないと予想されている。
小池良次(www.ryojikoike.com)
2月19日、米国の携帯大手は相次いで、掛け放題月額100ドルプランを発表している。
約1ヶ月前、業界3位のSprint Nextel社がフラットレート(月額120ドル)のテスト販売を開始した。その挑戦を受けて立ったのが、Verizon Wireless社で、19日に全米で掛け放題月額100ドルプランを発表した。
掛け放題プランの狙いは、法人ユーザー。米国では会社から支給された携帯電話で仕事をするが、この料金がどんどん増えており、企業は頭を悩ませている。
Verizon Wireless社が発表した数時間後、業界トップのAT&Tも掛け放題月額100ドルプランを発表し追従した。AT&Tは2月22日からサービス開始する。また、T-Mobile USA社もすぐさま追従、99ドル99セント掛け放題プランを2月21日から開始するとアナウンスした。
日本では、ソフトバンクさんが低価格戦争に火をつけたが、米国では純減に直面したSprint Nextel社をきっかけに、フラット価格戦争が始まった。
さて、どのくらいのユーザーが、このプランを利用するのか。今後の動きが楽しみだ。
蛇足)固定電話大手への対抗策としてT-Mobile USAは、VoIPプランを発表している。
小池良次(www.ryojikoike.com)